近頃、Uber Technologies Inc.(以下Uber Eatsという)がそのフードデリバリーサービスにつき、その主な競合企業であるFoodpandaの台湾事業を買収する方針であった。当初は市場集中効果を狙い、台湾におけるフードデリバリープラットフォームの新しい競争環境を再構築する見込みであったが、2024年12月、行政院公正取引委員会(以下公正取引委員会という)はこの合併申請を正式に却下した。その理由は、市場集中が過度であること、取引相手の価格交渉力が著しく弱まっていることおよび全体の経済利益が不十分なことなどが挙げられた。この決定は、社会のあらゆる分野がフードデリバリープラットフォーム市場がほぼ独占される状態に対する懸念を反映するだけではなく、公正取引委員会がデジタルプラットフォームの合併提案に対する慎重な姿勢をも浮き彫りにしている。
審査期間において、公正取引委員会はプラットフォームの経済規模の拡張がもつ4つの側面(市場集中度、合併企業の価格決定力、相乗効果(共同行動)、市場効率)に対して詳しく分析し、数回にわたり公聴会を開催し、労働部、交通部、経済部を含めた政府機関と消費者団体、配達員組合、飲食店業者など重大な影響を受ける利害関係者たちの意見を幅広く要請し、見直しの検討事項に取り入れた。ある期間の審議を経て、公正取引委員会は、この合併案が許可された場合、Uber Eatsの市場占有率が高すぎる(約90%以上)ため、過度の市場集中もしくは独占状態になり、競争圧力がほどんと働かず、市場を一方的に支配する効果を生じてしまい、参入障壁が高いため新規競争者の参入が制限され、抵抗する力がなくなると最終的に評価した。
上掲の悪影響だけであれば、公正取引委員会は必ずしも合併提案を却下するわけではない。例えば、近時大手スーパー全聯が大潤発を買収する案では、合併を禁止しないが負担を付加する方式をとっており、全聯のビジネス慣行を制限することを前提条件とし、合併後の全体の経済利益が競争制限のデメリットを上回ることを保証している。しかしながら、今回公正取引委員会は検討した後、Uber Eatsが提出した追加条件や負担はすべてこの合併によって市場競争にもたらされた競争制限に対するデメリットを有効に補うことができず、この合併により市場構造が根本的に変えられ、主な競争者が排除されるため、将来的にはUber Eatsの価格上昇、サービス品質の低下などにつながることはほぼ確実であり、しかもその悪影響が実現可能な追加条件で有効に解決することはできないと判断した。
Uber EatsのFoodpanda買収提案が公正取引委員会に却下されたことは、台湾における公正取引法をプラットフォーム経済の合併審査に適合される重要なマイルストーンとなった。この事案における公正取引委員会の却下決定は、政府機関から配達員やフードデリバリーサービスを利用する一般市民まで、社会中のあらゆる分野が配達業者の独占リスクに対する懸念に応えており、不利な立場にある取引相手を保護する法的意識をも示している。この決定は、大規模なプラットフォームの合併や市場占有率の高い買収案にとって、高い参考価値があるに違いない。そして所轄官庁が企業合併の実現可能性を評価する際に、市場競争構造と全体の経済効果に対する長期的な影響をより一層慎重に考慮することを促すものとなろう。
デジタルプラットフォームが拡張しつつある中、お互いの統合も頻繁になり、公正取引法などの競争法が時と共に進み審査ツールと視点をどのように調整すべきかは、将来政策立案者や実務家、司法機関にとって、度外視できない課題となるだろう。台湾の政策は企業の効率性と公正な競争との間でどのようにバランスをとるべきかについて、外国の法規制の審査基準を参考しながら実務の事例を積み重ね、安定した審査基準を立ち上げ、将来の市場競争の秩序基礎を築くとよい。