職業安全衛生法第6条第2項では、労働者が職務を遂行している中、他人の行為によって身体や精神が不法に危害された場合、使用者が必要な安全対策を計画し講じるものと規定している。さらに、事業の労働者数が100人以上達する場合、使用者は中央主務官庁が公告した関連ガイドラインを参照しながら労働者の職務遂行におけるリスクにより、職務遂行中に遭う不法危害を予防する計画を策定し実施しなければならないと、職業安全衛生施設規則第324条の3第2項で規定されている。この点につき、労働部は使用者に参照させるために〈職務遂行中の不法危害予防ガイドライン〉(以下予防ガイドラインという)を公告している。
台湾でいくつかの職場いじめ事件が発生したのをきっかけに、2025年2月21日、労働部は同予防ガイドラインを改正し第4版を公告した。そのポイントは次のとおりだ。
1、 職場における不法危害行為の種類および定義を明確化
(1) 今までの予防ガイドラインでは、労働者が遭う職場の不法危害行為の種類は上司や同僚が職務もしくは地位的な優勢を利用し不当に扱ったことと、顧客やサービスする対象からの攻撃や言葉による侮辱などのいじめもしくは暴力事件が含まれていると言及したものの、明確的に定義していなかった。
(2) これに対し、第4版の予防ガイドラインでは、事例で職場における不法行為の種類を「職場暴力」、「職場いじめ」、「セクハラ」、「雇用差別」と分けている。この中で、注目されている「職場いじめ」を「労働者が職務遂行中、労働場所において同僚もしくは上司、部下の間で、職務や権力濫用もしくは不公平な扱いにより、継続的に攻撃、脅迫、無視、孤立もしくは侮辱を受け、労働者に挫折、脅迫、侮辱、孤立、傷つけられた感じを与え、その心身の健康もしくは安全を危害することを含む」と具体的に定義している。
2、 社内不祥事発生時の対応手順を明確化
(1) 今までの予防ガイドラインでは、組織内で不法危害事件が発生した場合、労働者代表が調査に参加しなければならないと規定しているが、調査チームの結成および手続きにつき明確な定めはなかった。
(2) これに対し、第4版の予防ガイドラインでは、次の通り規定している。事件発生後3日内に対応チームを立ち上げ、調査しなければならない。労働者数が100人以上の場合、調査チームのメンバーは3人以上で構成され、その中で社外の専門家(法律、医療もしくは心理学などに関連する分野が推奨される)が2人以上とする。調査チームが会議するとき、メンバー全員の半数以上が出席し、その中の社外専門家は少なくとも半数以上が出席するものとする。労働者数が30人以上100人未満の場合、調査チームメンバーは少なくとも3人で構成される。労働者数が30人未満の場合、使用者が労働者代表と共同で対応することができ、実務上で難しい場合は、社外の専門家に調査を依頼することをアドバイスする。調査期限は、2ヶ月内に完成するものとし、必要のあるときは1ヶ月間延長することができる。
予防ガイドラインはあくまで行政指導に過ぎず、使用者には拘束力を有していない。ただし、労働部114年5月1日付けニュースリリースによると、労働部は新たに提出された職業安全衛生法改正案に職場いじめ防止の条項を特別に増訂しており、この改正案は現在行政院により可決されており、立法院で三読会を経て可決されれば、予防ガイドラインにおける職場いじめに関する定義および調査手続きは拘束力のある規範になる可能性がある。したがって、使用者は今のうちに自社の社内規則が予防ガイドラインの規範に合致しているかどうかを確認し、法改正のプロセスに合わせて調整することをアドバイスする。