「工商時報_名家評論コラム」: 株主総会決議の争議から商業事件審理法の特色

2020-08-10

新型コロナウイルスのパンデミックが起こる寸前に、台湾政府は司法改革を推進するため、巨額(新台湾ドル1億元以上)及び専門的で複雑な商業事件を一般民事事件から独立させ、「商業事件審理法」(以下『商審法』という。施行期日は司法院により改めて公布する。)」

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新型コロナウイルスのパンデミックが起こる寸前に、台湾政府は司法改革を推進するため、巨額(新台湾ドル1億元以上)及び専門的で複雑な商業事件を一般民事事件から独立させ、「商業事件審理法」(以下『商審法』という。施行期日は司法院により改めて公布する。)」によりその関連紛争を処理する特別な手続きを設けることになった。本来の民事事件手続きと異なり、多様な特別の制度が設けられ、迅速でかつ専門的に紛争解決できることを目的とする。

新型コロナウイルスのパンデミックが暫く抑えられた時に、「会社が自ら株式に関わる業務を行った場合、株主総会決議には重大な瑕疵がある」という争議が起こり、台湾のビジネス界では、「株主総会決議の効力は、これで終局にならないのか」という疑問が生じた。それゆえ、改正商審法の下で、その争議を如何に迅速かつ専門的に解決できるのかについては、各企業とその経営者が関心を寄せている重要なテーマである。本稿は株主総会議決の争議を例として、商審法の重要なポイントを説明する。

一、上場企業の株主総会の争議に、商審法を適用

上場企業が自ら株式に関わる業務を行い、株主総会において株主の董事選挙の投票権を奪ったことは、「株主総会決議の効力」にかかわるため、商審法の適用対象とされている。同法に従い、その争議は法に則って弁護士強制代理となり、弁護士が手続上の代理人とし、関連する訴訟又は非訟の手続きを行う。

二、株主は法に則って、暫定状態を定める処分の申立が可能

株主総会決議は、会社経営方針の決定、定款の修正、財務諸表の承認及びトップの人事などとかかわるため、全て会社内外に影響を及ぼす重大事項である。その効力に対し、疑問を抱かれた場合には、仮に当該株主総会決議の効力を認めれば、会社経営の取り返しのつかない危機になる可能性がある。そのため、会社が自ら株式に関わる業務を行い、株主総会における株主の董事選挙権を奪ったことについて、会社に重大な損害の発生を防止することや差し迫った危機を回避することを釈明したうえ、暫定状態を定める処分を申立て、株主総会決議の効力は凍結される。申立ての際、裁判所は必要があると認めた場合には、申立人に担保の提供を命ずることができる。裁判所は当該決定を下す前に、原則的には、会社側の意見を余すところなく陳述させ、これによりデュープロセスを守ることができる。

三、訴訟提起の前に、調停手続きが必要

紛争の早期解決、株主と会社側のコンフリクトを減らし、お互いビジネス上の最大の利益を図るため、できる限り裁判外紛争解決手続を利用し、訴訟に巻き込まれる前に解決すべきである。しかし、株主総会決議について、仮に主務官庁が当該株主総会の議決に重大な違法状況があると認め、一時的な処分を下した場合、当該紛争が調停手続をもって解決される可能性は低くなる。そのため、訴訟提起の後に裁判所が直接株主総会の議決効力を確認することになってしまう。

四、訴訟提起した株主は、関連資料の提出要求又は問い合わせができる

会社が自ら株式に関わる業務を行った場合、関連の招集手続き又は投票権の剥奪、投・開票手続、会議の司会・進行は、全て会社の董事長の関係者が握る。同法に従い、関連情報を持つ会社側が自ら提出するか、又は訴訟提起した株主が提出するよう要求できる。仮に会社側が正当な理由がなく、問い合わせ事項の説明、又は関連証拠の提出を拒否した場合、裁判所は状況により、株主が申立てた問い合わせ事項又は提出するよう要求した証拠の信憑性を認めることができる。

五、商業調査官が事実調査に協力、専門家証人が鑑定及び専門的な意見を提供

事件が株式に関わる業務について、株主総会の選挙権における紛争が起こった場合、ガバナンスと経営において高度な専門性を有することに鑑みて、裁判官は商業調査官に諮問でき、当事者への理解及び意見陳述の機会を与え、これにより関連争議を迅速に収束させるよう促せる。株主総会の選挙手続き及び臨時的な株主選挙権の剥奪は、法に合致するのかについても、特定領域に専門性を有する学者や実務業界の専門家を証人として専門的な意見を提供してもらうことができる。裁判官にはこれらの専門家の意見を聞き、さらに公正で合理的、迅速な判断を下すことが期待される。

六、秘密保持義務、証拠保全

株主総会が決議した争議内容が会社の営業秘密にかかわる場合、会社側も理由を釈明し、裁判所に提出拒否の正当性及び必要性の有無を判断してもらわなければならない。仮に裁判所が、会社の営業秘密を開示する必要があると認めた場合、会社側も裁判所へその開示によって秘密を知った人に秘密保持を命ずるよう申立てることができる。訴訟提起した株主について、株主総会の争議の証拠が時間とともに消えていく可能性がある関連証拠は、裁判所へ証拠保全を申立てることができる。これにより、重要な証拠が保存され、事件が正式に審理される時に使用でき、裁判の根拠となる。

以上、一般民事事件手続きと異なった救済制度により、上場企業の商業事件は専門的にかつ迅速で、そして双方のビジネス利益を尊重しつつ、徹底的な紛争解決という目標を達成することが期待される。株主総会の議決効力の争議がいつ終了するのか。商審法が施行されるまでは、一般民事事件手続きによらねばならず、これにより、関連権利を救済することになる。今のところ、会社側は将来に着目し、主務官庁が下した行政処分に対し、速やかに関連訴願や行政訴訟を提起し、自社の権利を救済すべきであろう。

この文章は「名家評論コラム」に掲載  https://view.ctee.com.tw/legal/22179.html