「工商時報_名家評論コラム」:音声プラットフォームにおける法的限界

2020-08-27

台湾において、ユーチューバー(YouTuber)という言葉は聞きなれているものの、ポッドキャスター(Podcaster)はまだなじみがないかもしれない。ポッドキャスト(Podcast)は、iPod(アイポッド)とbroadcast(ブロードキャスト)を組み合わせた造語である。

作者

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蔡孟芩

台湾において、ユーチューバー(YouTuber)という言葉は聞きなれているものの、ポッドキャスター(Podcaster)はまだなじみがないかもしれない。ポッドキャスト(Podcast)は、iPod(アイポッド)とbroadcast(ブロードキャスト)を組み合わせた造語である。ポッドキャストとは、ラジオのように聞いて楽しむ一面もあるが、ユーチューブのように好きな番組を選び、好きなところで再生や一時停止できる一面もあるため、「聞くユーチューブ」とも呼ばれることがある。ポッドキャストは、海外で長年にわたり人気を集めてきているが、今年台湾において当地の番組がいくつかヒットし、注目を浴びたため、数多くのユーチューバーが主戦場をユーチューブからポッドキャストに移した。

 聞くユーチューブと思われているのであれば、ユーチューブに適用された法的規範も同様にポッドキャストに適用される。規範の中で基本的なのは著作権法である。コンテンツの中で使用されるオープニングあるいはバックグラウンド音楽や、朗読した文章・ニュース内容が、著作権法で保護されている著作であれば、事前に音楽や文章の著作権者の同意を得なければならず、さもなければ、使用もしくは公開朗読が著作権侵害になり得る。

 また、有名なポッドキャスターには熱狂的なファンがたくさんいるため、番組の中でポッドキャスターが商品紹介等の広告を出せば、その影響は多大である。そのため、スポンサーに見出されることで、ポッドキャスターの収入源になる。しかしながら、番組内でのPRやプロダクト・プレイスメント(P.P.)をするには、公平取引法での広告推薦者や著名人による宣伝などに関する規範に注意しなければならない。商品が化粧品、美容や医療効果にかかわる場合、薬事法、医療法、化粧品衛生安全管理法などの関連条項に留意しなければならない。

 インターネットプラットフォームにおいて配信された内容が権利侵害になる場合、インターネットプラットフォームに責任があるのか。ユーチューブやフェイスブックなどユーザーにコンテンツをアップロード・保存・配信するプラットフォームを例として、著作権法はこういったインターネットプラットフォームにユーザーがアップロードしたコンテンツを審査する義務は課されないが、著作権者から上記のコンテンツの権利侵害の通知が届いた場合、インターネットプラットフォームには削除や侵害疑義コンテンツへのアクセスを遮断する義務があり、そうしない場合、著作権の賠償責任を免れることができない。こういった規定は、「インターネットプラットフォームのセーフハーバー条項」とも呼ばれている。

 聴衆がApple Podcast、Spotify及びGoogle Podcastなどポッドキャストの配信プラットフォームを通じ番組を聞く時、これらの番組はユーチューブ、フェイスブックと同じように、ポッドキャスターが直接番組をプラットフォームにアップロード・保存・配信していると思うかもしれない。実は作成されたポッドキャストの番組は、まずデータ保存プラットフォーム会社に保存してから、データ保存プラットフォームが番組のRSS Feedを配信プラットフォームに提供する仕組みである。つまり、データを保存するプラットフォームは幕の後ろに隠れていて、実際に番組を配信するプラットフォームはデータを保存していない。そうすれば、この2種類のプラットフォームは、著作権法で定義される「接続サービス提供者」、「クイックアクセス提供者」、「データ保存サービス提供者」、「検索サービス提供者」のインターネットサービスプラットフォームに合致するか、またセーフハーバー条項に適用されるのか、もう一度考え直さなければならない。

 フェイスブック、ユーチューブ、ポッドキャスト及びOTTなどは、すべて移動通信技術の加速度的な発展に伴い生まれた新しいビジネスモデルである。しかしながら、現行の法律の新興科学技術に対する規範限界については、新たな課題も生じることとなる。最近アメリカ政府は国家安全保障を理由に、ティックトック(TikTok)とウェイシン(WeChat)の使用を禁止しようと検討している。EUもグーグルによるFITBIT買収について厳密な調査を始めた。上記の事例はポッドキャストと直接関係していないが、共通の特徴は「ビッグデータ」である。実際に、「ビッグデータ」に対し、国際的な主要マーケットは多くの措置を取っており、その背後にある懸念は、「情報と国家安全保障」、「情報当地化」、また「ビッグデータから生まれた競争法(独占禁止法)違反の疑い」などである。

 従来通りのラジオやテレビが法律上綿密に規範されているのに比べ、ポッドキャストはもっと自由で、ビジネスの発想をさらに発揮できるプラットフォームである。しかしその反面、個人のプライバシーと個人情報安全の保障は見落とされてしまう可能性も無視できない。

 ポッドキャストというプラットフォームは、的確に検索できるという特性があるため、ユーザーの興味、聞く時間、聞く場所などの情報が収集されている。こういった情報は、ユーザーの性向や個人の特質を分析するのに資し、ビジネスとして相当な価値がある。しかしながら、ポッドキャストというプラットフォームは、個人情報の安全には十分な保障があるのか、そして誰が管理するのかが問題となっている。

 先だってNCCが起草した「インターネット視聴サービス管理法」草案には、ポッドキャストなどユーザー作成コンテンツ(User Generated Content, UGC)を配信するメディア・プラットフォームは含まれていない。人目を引くことがビジネスチャンスである時代において、ポッドキャストの発展は注目すべきであり、今後、ポッドキャスト規模の拡大により、再び法規範の限界が問われるかもしれない。

この文章は「名家評論コラム」に掲載。

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