工商時報_名家評論コラム ネットゼロに対応する工事契約の新たな動向

2025-06-11

世界中で気候変動問題が深刻化するにつれ、企業は、ネットゼロや気候リスク、サプライチェーンからの持続可能性へのプレッシャーをどう対応するかを検討する必要に迫られている。工事分野では、脱炭素化および持続可能という企業の目標を達成するために、契約の条項を調整する必要も現れてきた。 一例を挙げると、近年一般

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世界中で気候変動問題が深刻化するにつれ、企業は、ネットゼロや気候リスク、サプライチェーンからの持続可能性へのプレッシャーをどう対応するかを検討する必要に迫られている。工事分野では、脱炭素化および持続可能という企業の目標を達成するために、契約の条項を調整する必要も現れてきた。

一例を挙げると、近年一般的になっているサプライヤーサステナビリティマネジメントの仕組みでは、サプライヤーは、「企業の社会的責任(CSR)に関する宣言」、「ESGコミットメント」、「企業のサステナビリティアンケート」などの文書を署名または提供し、企業のサステナビリティを支持し、ESGを順守することを宣言するのが求められている。こういった文書の内容は、サプライヤーに関連条項を順守することを要求するほか、温室効果ガスインベントリの実施状況や炭素削減目標を設けて何か行動しているかどうか、気候変動に合わせて財務リスクへ対応しているかどうかなどを問うのが一般的である。

これらの文書は、企業がサプライヤーのサステナビリティパフォーマンスを把握し、サプライチェーンのサステナビリティ管理や評価を行うことに役立つものの、実際では問題が依然として存在している。例えば、これらの文書は大抵サプライヤーが自ら該当する項目に「レ点」を入れるか質問に簡単に答えるのみであり、報告書や監査、第三者評価を添付する必要がない。あとでその内容が事実と一致しないことが判明したとしても、契約書には契約違反の責任または契約解除の影響を定めていない。長期的な協力関係において、企業が定期的に確認、審査、改善するメカニズムを確立していなければ、その声明も意味をなさず、企業のサステナビリティを実際に推し進めることができない。さらに深刻なことに、企業が完全な監査と確認をせずにサプライチェーンのサステナビリティ管理を実施したと宣言すると、グリーンウォッシュ問題につながり、企業の評判に影響を与えたり、法的リスクを高めたりする恐れがある。

現在金融監督管理委員会は「上場・店頭公開企業の持続可能な発展のための行動規範」第26条において、企業はサプライヤー管理と契約設計にCSRへの考慮を組み込むことが「望ましい」 と規定している。その中にはサプライヤーの環境や社会への影響を評価すること、サプライヤーと協力してCSR方針を実施すること、相手方のCSR方針を契約に取り入れるのを要求すること、そしてサプライヤーがCSR方針に違反し、供給元コミュニティの環境や社会に重大な影響を与えた場合に企業が契約を解除または終了できる条項を設計することなどが含まれている。

この規定はあくまでも助言的なものであるが、今後、上場・店頭公開企業がサプライヤーと契約書を通して持続可能な発展を推進する方向にもなりえる。将来的には、サプライチェーンの持続可能な発展は単なる宣言だけではなく、守らなければならない契約上の義務になることを意味している。

国際的な契約慣行の発展に伴い、具体的な炭素管理条項が組み込まれるようになった。例えば国際コンサルティング・エンジニア連盟(FIDIC)が発行する契約約款(赤本、黄本、銀本を含む)には、請負業者の環境保護義務に関する条項が含まれており、建設することによって発生する炭素排出量は、法律または契約で定められた基準を順守しなければならないと規定されている。

また、法規制と契約で気候変動に対処することを推進する国際組織Chancery Lane Projectも、工事契約に適用できるモデル条項を多く提供している。例えば、契約履行期間におけるカーボンフットプリントの算定と報告をサプライヤーに要求したり、サプライヤーの炭素削減KPI(段階的な削減目標、廃棄物処理量、リサイクル材料の使用量、取得した環境認証など)を設定したり、達成状況に対し相応な奨励や処罰を設計したり、設計から材料調達、施工までの段階は全てネットゼロもしくは炭素削減を取り入れることをサプライヤーと約束したり、施主の指示に応じて適切に調整しネットゼロの目標に合致させたり、関連する契約違反の責任を組み込むことなどが挙げられる。

気候変動により効果的に対処するためには、宣言書に署名するだけでは市場とクライアントを納得させることができない。むしろ、ネットゼロへの変革を契約書の条項に取り入れる挑戦に直面する必要があり、具体的な炭素削減の行動を取るほか、企業の契約の交渉、履行・管理および条項の執行能力もかかている。

この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://www.ctee.com.tw/news/20250611700109-431305