「工商時報_名家評論コラム」:イギリスEU離脱及び知財戦略

2021-01-13

今年から、EU法は、イギリスに適用することができなくなる。ただし、欧州特許庁(European Patent Office)は、欧州特許条約(European Patent Convention)によって設立されており、また、イギリスは、同条約の加盟国であるため、イギリスがEUから離脱したが、原則的

作者

作者

魏培元

今年から、EU法は、イギリスに適用することができなくなる。ただし、欧州特許庁(European Patent Office)は、欧州特許条約(European Patent Convention)によって設立されており、また、イギリスは、同条約の加盟国であるため、イギリスがEUから離脱したが、原則的に、欧州特許庁の運営に影響を及ぼさない。ただし、一部の制度が変わった。

   イギリスのEU離脱移行期間が去年(2020)年末に終了した。今年から、EU法は、イギリスに適用することができなくなる。知的財産権は属地主義であり、すなわち、各国や各地域において出願して登録するか、又は当該国や当該地域の法律に認められる場合、始めて効力が生じる。したがって、EU法がイギリスに適用することができなかった場合、イギリスにおいて、知的財産権の適用は、如何なる変化が生じるであろうか。  

   特許権及び著作権は、原則的に、影響に及ぼすことはないと考えられる。欧州特許庁は、欧州特許条約に基づいて設立されており、EUの機関ではないので、イギリスは、EUを離脱したものの、依然として欧州特許条約の加盟国である。したがって、イギリスがEUから離脱したが、原則的に、欧州特許庁の運営に影響を及ぼさない。

   しかし、医薬品に関連している補充的保護証明書(Supplementary Protection Certificate、又は「SPC」という。)制度は、若干調整が行われる。SPC制度は、EU法に属している。医薬品又は農用化学品の販売許可証の取得には、比較的に長い時間がかかっている。申請及び審査の時間を補償するため、薬品や農用化学品の特許権者は、特定の条件の下で、特許権の権利期間について、最大5年間の延長を申請することができる。

   今年から、イギリスでは、SPC制度が適用できなくなるが、すでに許可されたSPCは、継続して有効しており、申請中のSPCも継続して審理を行われているので、改めて申請する必要はない。しかし、2021年1月1日以降新規申請の案件は、イギリスの法律に従い審理されているが、申請手続きは、基本的には、従来の手続きに従い行われている。ただし、欧州医薬品庁(European Medicines Agency/EMA)から付与された販売許可証を根拠として特許権の権利期間の延長を申請する場合、EMAが発行する許可証と同等の効力を有しているイギリス医薬品・医療製品規制庁(MHRA)が発行する販売許可証に引き換える必要がある。なお、EU法によると、児童用医薬品のSPCは、6ヶ月の延長を申請することができる。今年から、このような延長の申請の可否も、イギリスの法律に従い判断することとなる。

   欧州連合商標(EUTM)、共同体登録意匠(RCD)及び非登録共同体意匠(UCD)の保護範囲は、EU離脱の移行期間が終了した後、イギリスに適用されなくなる。しかし、既存の欧州連合商標及び意匠(RCD及びUCD)について、イギリスの知的財産庁は、自主的に、権利者に対し、同様な権利を付与することになる。出願中の欧州連合商標及び意匠(RCD)については、出願者は、2021年9月30日までにイギリス知的財産庁に同じ商標や意匠を出願すれば、欧州連合商標及び意匠の出願日を留保することができる。  

   著作権について、イギリスは多く国際著作権条約に加盟しているため、2021年1月1日前又はその後の著作であっても、イギリス及びEUの著作権法は継続して各国や地域の著作を相互に保護している。

   一方、イギリスからEUに並行輸入される製品は、制限される可能性がある。EUは単一市場であるため、EUのある加盟国で適法的に製品を購入し、同製品をEUの他の加盟国へ転売する場合、知的財産権を侵害することにならない。しかし、イギリスは今年から単一市場に離脱しているので、イギリスで購入した製品をEUの諸加盟国に販売する場合、製品の権利者のEU法上の知的財産権を侵害することを避けるため、事前に権利者の同意を取得する必要の有無を検討する必要があると考える。

本文は「工商時報、名家評論コラム」に掲載。https://view.ctee.com.tw/legal/26077.html