「工商時報_名家評論コラム」: 「通勤」と「労災」の距離

2021-05-03

近時、台南に住んでいるある労働者は、朝出勤する途中、原付に5分も多く乗ってわざわざお粥を買いに行ったが、事故に遭ってしまい、結局裁判所に労災と見なされたニュースがあった。従業員にとって、朝ご飯を食べることはとても大切であるものの、企業にとっては、労災が発生すれば無過失責任を負い補償しなければならず、

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近時、台南に住んでいるある労働者は、朝出勤する途中、原付に5分も多く乗ってわざわざお粥を買いに行ったが、事故に遭ってしまい、結局裁判所に労災と見なされたニュースがあった。従業員にとって、朝ご飯を食べることはとても大切であるものの、企業にとっては、労災が発生すれば無過失責任を負い補償しなければならず、リスクは大きいものである。よって、通勤災害は労災に属するか否かをはっきりさせること、補償責任のリスクを如何に低減するか等、企業のリスク管理の重要な課題の一つである。通勤災害について、〈労働者保険被保険者の職務執行による傷病に対する審査準則〉の関連規定や、現在所轄官庁及び実務上の見解の多くは、「労働者が労務を提供するため」、「適当な時間において」、「日常の住居と就業の場所との間の往復」及び「合理的な経路」等要件を満たしてから、事故が発生し怪我した場合、労災に見なされることになる。ただし注意していただきたい点は、労働者の個人的な行為からくる法違反(例えば赤信号無視、飲酒運転等)による通勤災害は、労災に認定されない。上述の「適当な時間において」及び「合理的な経路」とは、如何に解釈すべきかについて、疑問である。現在裁判所にも絶対、一致な基準がなく、事案における全ての状況をまとめて判断しなければならない。実務上では、労働者の出退勤に必要な通勤時間及び通勤経路は合理的かどうかを考慮し、その通勤災害は労災にあたるか否かを判断すると説明した判決がある。合理的な通勤時間及び通勤経路は、出退勤の最短距離や時間、グーグルマップが教えてくれたルートを基準にしてはおらず、実務判決でも、「朝食の購入」と「お子さんの送迎」というよく見かける通勤災害のパターンに対し、判断基準を詳しく説明した。「朝食の購入」による通勤災害につき、最近の台南裁判所の別の事件の判決では、労働者が夜勤の退勤後寄り道をしてお粥を食べに行ったことは、台南地域の一部の人々の日常生活に必要な個人行為であり、就業の場所から住居までの最短ルートではないが、更に4~5分をかけるだけであり、社会の経験則から考えると、合理的な生活圏内にあるため、合理的な通勤経路に属し、労災に認定することができるという。しかし他の判決では、労働者は会社へ行くなら南西方向へ行くべきのに対し、北東方向へ運転し、住居から1キロ離れた朝食店へ行って朝ごはんを買った。この経路は、労働者が住居から就業の場所までの合理的な経路にはならず、労災に認定することはできないと言った。「お子さんの送迎」による通勤災害につき、ある裁判所の判決では、子供を送迎することは個人的な行為に属し、仕事とは関係なく、仮に子供を送迎する場所と就業の場所と方向が違えれば、明らかに合理的な経路ではなく、労災にならないのである。また、他の裁判所の判決では、子供の送迎は現代社会における「日常生活に必要な行為」と認めた。労働者の日常生活の住居を円心とし、一定な距離をもって外へ円を描き、その範囲を出退勤に子供の送迎の「合理的な経路」とし、この範囲内で発生した交通事故は労災に認定することができると示した。労働者に労災が発生したとき、労働基準法第59条規定によると、企業は故意や過失の有無にかかわらず、労働者の死亡、能力喪失、怪我や病気等状況に対し、すべて無過失責任を負い、賠償しなければならない。そのほか、労働者が治療中で働けない場合、企業も給料を補償しなければならない。通勤災害は往々にして事故に属し、防止することが難しい。リスクを回避するのに最もいい方法は、労働者のための労働者保険に加入させることである。企業は、労働者が労働者保険局から受け取った各種の労災給付を控除することができ、これによって企業の補償責任を低減することができる。また、近時「労働者労災保険及び保護法」は第三読会で可決され、保険範囲を拡大し、多くの労災給付限度額を上げることにした。労働者が労災に遭ったときの保障が更に整われ、企業にとって控除できる限度額も上げられたので、労働者も企業も双方に利益がある。高雄に住んで朝は鍋焼きうどんにしても、台南に住んで朝は牛肉スープにしても、または出退勤の途中に子供を送迎するにしても、すべて前述の審査準則の規定及び裁判所の判決に採用された「合理的な通勤時間及び通勤経路」に帰し、その通勤災害は労災であるかどうかを判断すべきである。それと同時に、事実に従い従業員を労働者保険に加入させることを企業にアドバイスする。そうでなければ、所轄官庁に罰金を取られるリスクがあるだけではなく、労災の無過失責任を過度に負い、補償しなければならない。(この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://view.ctee.com.tw/legal/29042.html