「工商時報_名家評論コラム」: 宿日直制度、歴史となる

2022-03-09

業務の需要に応じて、企業は、労働者に当直させる必要がある。例えば、勤務時間が終わってからも会社に残り、工場の巡回や緊急電話の受理等をする場合がある。内政部は1985年に「事業単位が労働者に宿日直実施させるときの注意事項」を公布し、労働者の宿日直制度を次のように定義した。事業単位が労働者に「勤務時間以

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業務の需要に応じて、企業は、労働者に当直させる必要がある。例えば、勤務時間が終わってからも会社に残り、工場の巡回や緊急電話の受理等をする場合がある。内政部は1985年に「事業単位が労働者に宿日直実施させるときの注意事項」を公布し、労働者の宿日直制度を次のように定義した。事業単位が労働者に「勤務時間以外に」、労働契約に約束されてない勤務を従事させること。例えば、急に必要となった書類の収受、電話受理、事業場所の巡回及び緊急事故の通報、連絡や処理等を指す。

 上掲の宿日直に関する注意事項から分かるように、主務官庁が明確に認定した労働者の宿日直の時間は、労働基準法でいう延長勤務時間(残業)とは異なる。そのため、労働者が宿日直をした時間は、残業時間に加算されなく、労基法の残業時間上限に拘束されない。使用者は宿日直手当だけ支給し、労基法に従い残業手当を計算する必要がない。

 しかしながら、使用者が支給した宿日直手当の額は、ほとんど労基法で定められている残業手当より遥かに下回っている。その影響で、実務上では常に労使争議をもたらしている。今まで台湾の裁判所は、使用者が労働者に法定の残業手当ではなく、宿日直手当だけを支給することに対し、見解が分かれている。

 ある裁判所の見解は、「残業」と「当直」を明確に区別しており、「残業」とは本来の勤務場所にとどまり、本来契約した勤務内容(専門と職務)と同じ仕事を従事し、かつ残業する間において、睡眠や本来の仕事と関係ない事務を従事してはならず、労働する程度が通常通りとあまり変わらない場合を指す。一方「当直」とは、通常通りに労働することではなく、当直する間において、本来の仕事と関係ない事務や睡眠、外出等を従事することができ、相当な柔軟性がある。


 しかしこれと反対する見解もある。労働者を保護する本意を成し遂げるため、労働者が使用者の命令に従い勤務すれば、労基法で定められている勤務時間になり、労基法に従い残業手当を計算すべきと認めている。労働者が通常の勤務時間以外に、通常の勤務時間に行う仕事と性質が異なる仕事を従事することが残業でないこととは言えないのである。


 前掲の争議は、実務上では珍しくも何ともない。労働部は2019年3月11日に、前出の宿日直に関する注意事項が2022年1月1日から適用停止することを予告し、調整するための3年間の過渡期を企業に与えた。36年も実施してきた宿日直に関する注意事項の適用停止につれ、労働者が宿日直する制度は歴史となり、この争議もこれで一段落した。今後企業が労働者に宿日直を要求する場合、労基法の「勤務時間」に基づき、延長勤務時間に加算され、残業手当を支給すべきであり、そして7日に最少1日の休日、輪番の間隔が最少連続11時間の休憩時間を設けらなければならない。労働者に宿日直をしてもらう必要があれば、速やかに人事コストを見積りし、人力をよく配置することをアドバイスする。

この文章は「名家評論コラム」に掲載。https://view.ctee.com.tw/tax/37622.html