工商時報_名家評論コラム サステナビリティレポートと財務諸表における「マテリアリティ」は異なっている

2025-08-06

企業のCFOが「マテリアリティ(重要性)」という言葉を聞くと、財務データにおけるパーセンテージ、例えば売上高の1%から5%が開示基準を満たしているかどうかを思い浮かべるかもしれない。しかし、企業のCSOが「マテリアリティ」という言葉を聞くと、プラスチック廃棄物が海洋生態系に与える影響を思い浮かべるか

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企業のCFOが「マテリアリティ(重要性)」という言葉を聞くと、財務データにおけるパーセンテージ、例えば売上高の1%から5%が開示基準を満たしているかどうかを思い浮かべるかもしれない。しかし、企業のCSOが「マテリアリティ」という言葉を聞くと、プラスチック廃棄物が海洋生態系に与える影響を思い浮かべるかもしれない。なぜ財務諸表とサステナビリティレポートでは「マテリアリティ」についてこれほど異なる議論がなされているのでしょうか?サステナビリティ報告書に誤りがあった場合、企業は虚偽の財務諸表を報告した場合と同じ刑事責任リスクに直面するのでしょうか?

まず、論議する必要あることは、サステナビリティレポートに虚偽記載があれば、証券取引法の刑事責任が生じるか否かである。現在この問題は、まだ明白な司法判例がないものの、潜在的なリスクが高まりつつある。虚偽の財務報告は、現在証券取引法第20条、第171条などの条項によって明確で直接に規制されている。しかしサステナビリティレポートの法的根拠は金融監督管理委員会が発表した〈サステナビリティレポート作業弁法〉であり、これは〈証券取引所営業細則〉から由来しているため、証券取引法を直接に適用することができるかどうかは、大いに疑問である。

しかしながら、将来裁判所がサステナビリティレポートを証券取引法第20条第2項の「業務文書」に該当すると判断すれば、その虚偽記載も証券取引法第171条を適用できる可能性があり、刑事責任を問われるリスクは直ちに高まる。ESG情報が企業の年次報告書のサステナビリティに関する章に次第に取り入れられる中、これらの情報は虚偽でかつ投資者の意思決定に重大な影響を与えた場合、刑事責任を引き起こす可能性もある。

だが、たとえ刑事責任が問われるとしても、将来裁判所がサステナビリティレポートの「マテリアリティ」を判断する上で、困難な課題に直面することになるでしょう。財務諸表の場合、裁判所は、企業が開示した虚偽情報は一般的で理性な投資者の投資判断に影響を与えるのに充分であるかどうかを判断する必要がある。しかしサステナビリティレポートの「マテリアリティ」を認定するのは、財務諸表のそれよりはるかに複雑である。通常サステナビリティの問題は、簡単に定量化することができず、長期的で定性的な影響を伴っており、財務諸表のように参照できる明確な判例も欠けている。また、異なる国の基準における定義の差も、司法判断基準の不確実性を大幅に高めている。

「マテリアリティ」の適用根拠から見ると、財務諸表におけるマテリアリティの基準は、主に監査準則公報の「監査計画および執行の重大性」や米国証券取引委員会(SEC)スタッフ会計速報第99号および台湾司法実務上の認定から由来しており、定量(金銭的価値の割合)と定性(不正)、投資者の意思決定に影響の有無の2つの観点に焦点を当てており、比較的に論議の余地はない。一方、サステナビリティレポートでいう「マテリアリティ」について、主務官庁の〈サステナビリティレポートの作成と提出に関する作業弁法〉において、企業はGRI準則の順守を求められているが、今後の訴訟においては、GRIかほかの異なる指標SASB、TCFDもしくはIFRS S1/S2を適用するか否かの判断が依然として求められるでしょう。GRIは企業の外部世界へもたらした実際の衝撃(ダブルマテリアリティ)を強調しているのに対して、IFRS S1/S2は主に企業の財務実績と投資価値への影響(シングルマテリアリティ)を考慮しているため、それぞれの基準は異なっている。

また、レポートを読む立場から見ると、財務諸表におけるマテリアリティの対象はより明白であり、すなわち投資者であるのに対して、サステナビリティレポートの対象は株主からサプライヤー、クライアント、消費者、従業員、地域社会、NGOまで幅広く、それぞれが重要視するポイントも異なっている。そうすれば、司法機関はどの利害関係者の立場で考えればよいのか。

今後司法はこれらの問題に直面しなければならないが、企業は前もってそれに備えるとよい。具体的には、財務とサステナビリティにおけるマテリアリティの違いを区別し、部門間のマテリアリティ評価システムを構築し、サステナビリティレポートにおける判断基準を明確に開示することなどがある。次に、厳密な社内統制手順を確立し、責任者をはっきりさせ、将来的に開示責任不明確による問題を回避する。さらに、第三者による検証と内部監査手順を導入し、定性的なリスクをできるだけ定量化し、開示内容の真正性、信頼性を確保することによって、グリーンウォッシングもしくは虚偽開示による法的リスク、レピュテーションリスクを軽減する必要がある。

この文章は「名家評論コラム」に掲載。

https://www.ctee.com.tw/news/20250806700104-439901